骨に転移したがん
治療の中心は痛みの緩和
通常、骨に転移したときの痛みは非常に強く、もっとも強力な鎮痛薬・モルヒネでも痛みをやわらげることは困難とされています。
脊椎(背骨)などに転移すると、その内部を通っている脊髄の神経が圧迫されるなどにより、体が麻痺することもあります。
骨折もしやすくなり、骨盤や大腿骨が折れて寝たきりになることもあります。
このように、骨への転移は、患者さんの生活の質(QOL)をしばしば大きく低下させます。
そのため、がんが骨に転移したときには、痛みの緩和を優先したさまざまな治療が行われます。
骨の溶解を抑える薬
治療の方法は大きく分けて3つ
- 第1は、放射線治療です。骨の痛みをやわらげる手法として、これまでもっとも利用されてきました。
- 第2は、薬による治療です。ビスホスホネート剤と呼ばれる薬が使われます。
- 第3は、手術でがんを取り除く手法ですが、まれにしか行なわれません。
放射線治療
骨の痛みをやわらげる有効な手段のひとつです。
患者さんの70〜80%に、疼痛を抑える効果があり、そのうち半数は完全に痛みがなくなるといいます。
がんが脊髄に転移している場合でも、放射線を照射すると、脊髄(中枢神経)が、がんのかたまりに圧迫されて起こる麻痺を防ぐことができます。
骨折しやすい患者さんの半数以上では、放射後、骨が少しずつかたくなるため、病的な骨折を予防できる効果もあるとされています。
放射線治療は、病状が重く、患者さんに体力がないときでも、受けることができます。
しかし、すでに放射線治療を受けた経験がある患者さんが同じ場所に、大量の放射線を照射すると、臓器の壊死などの後遺症が出る恐れがあるため、治療が制限されることもあります。
体外から放射線を放射する方法以外に、放射性物質を体内に投与する方法もあります。
がんが転移した骨では、しばしばカルシウムが活発に吸収・放出されています。
ストロンチウムは、カルシウムに性質が似ているため、がん患者さんに投与すると、骨の転移がんの周辺に集中します。
そこで放射線を放出してがんを攻撃します。
薬の投与
骨転移の痛みをやわらげるには、モルヒネでは効果が十分ではなく、従来は非ステロイド系消炎鎮痛薬が使用されてきました。
このタイプの薬を長期間使用すると、消化器や肝臓、腎臓などに重い副作用が現れます。
骨転移の治療の中心となったのは、ビスホスホネート剤です。
これはカルシウムに吸着しやすい性質を持ち、もともと水道管の水あか取りや歯垢防止剤として使われていた薬剤です。
がんが骨に転移すると、がん細胞は、破骨細胞と呼ばれる骨を吸収する細胞を活性化させます。
破骨細胞の異常な働きの、骨の内部に隙間が生じ、がん細胞が増殖しやすくなります。
そこで、ビスホスホネート剤が骨に吸着する作用を利用します。
破骨細胞が骨を吸収すると、骨に吸着した薬も同じに、破骨細胞内に入り、破骨細胞の働きを妨害します。
この薬には、痛みの緩和以外にも、高カルシウム血症を予防する効果があります。
破骨細胞が活性化して、骨の溶解が進むと、カルシウムが溶け出し、血液中のカルシウム濃度が高くなります(高カルシウム血症)。
結果、意識障害を起こしたり、吐き気や食欲不振などの消化器症状が現われたりします。
ビスホスホネート剤を使用すると、骨の溶解が抑えられ、血液中のカルシウム濃度も上がりにくいとされています。
前立腺がんや乳がんの骨転移に対しては、ビスホスホネート剤を使用することもあります。
また脊髄など神経が圧迫されて生じる痛みに対しては、ステロイド薬も用いられます。
手術
患者さんが手術に耐えられるときには、がんの切除も考慮されます。
骨以外には、転移がなく、発生場所のがんも増大していないときや、脊椎に転移して急速に体の麻痺が進行しているとき、あるいは弱くなった骨ががんの圧迫で骨折しやすいと診断されたときなどです。
がんを切除した後は一般に、人工骨や人工材料(骨セメント)を用いて、骨や関節を再建し、体外に補助器具を装着するなどの方法を取ります。
通常は、がん患者さんの病状に合わせて適切と思われる複数の治療法を組み合わせます。
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