
末期がんでは、呼吸不全、栄養失調、貧血、感染症、脳圧亢進、多臓器不全などの合併症が生じるためです。
がん末期には肺の機能が低下し、呼吸不全(呼吸困難)を生じることが少なくありません。
呼吸不全になると血液中に酸素を取り入れられないため、脳や心臓が停止します。
肺の機能停止の原因としては、原発性または転移性の肺がんでは肺に生じたガスや別の臓器から肺に転移したがんが肺全体を占めるようになり、肺が十分に機能しなくなります。
がんが原因となって起こる胸膜炎や腹腔に散らばります。
このため胸水や腹水が溜まって横隔膜を押し上げ、肺を圧迫します。
がんが器官の中に成長したり、器官を外から圧迫したりすると、気道(空気の通り道)が塞がれます。
がんが邪魔をして分泌物がうまく排出されないときや、がんから多量の分泌物が出るとき、また身体の抵抗性が落ちて感染を起こしやすくなったときに肺炎を生じます。
こうした場合の処置としては、酸素マスクをします。
それでも生命維持が困難なときには、器官内挿管(口からのどに管を挿入)や気道切開(のどを切り開いて管を挿入)が行われることがあります。
がんの末期になると、多くの患者さんは、栄養失調を起こします。
どんどんやせていき、最後には全身が衰弱して、餓死同然に死に至ります。
これはがんが大量の栄養を消費するためで、同時にさまざまな栄養障害の原因が生じるためでもあります。
がん性腹膜炎を起こすと、がんが消化管を圧迫し、腸管を癒着させ、腹水が大量に溜まることにより、食物の通過障害が起こります。
脳転移の場合、脳圧亢進により生じる吐き気や嘔吐のために食事が摂れなくなります。
臓器不全では、がんはあらゆる臓器の機能を障害し、消化・吸収代謝を妨げます。
この場合には、点滴で栄養補給を行ないます。
それで追いつかないときには、鎖骨の上下や首から点滴用の管を挿入して高カロリーの点滴(中心静脈栄養)を行うことがあります。
貧血が進行すると脳や心臓に必要な酸素を運ぶことができなくなり、血圧も下がって生命を維持できなくなります。
がんが進行すると表面が崩れてじくじくと出血を続けます。
血液を作る骨髄にがんが転移すると、血液が作られなくなって貧血を生じます。
輸血を行うことがあります。
がん患者さんは、免疫力が低下しているので、重い感染症にかかりやすく、それにより生命が脅かされることもあります。
尿管、胆管、器官などががんに塞がれて老廃物が溜まったり、がんが骨髄に転移して白血球が作られなくなると、感染に弱くなります。
栄養失調によって抵抗力が低下すると、さらに感染症にかかりやすくなるので、処置としては、抗生剤を投与します。
脳腫瘍あるいは脳に転移したがんが大きくなると、脳を圧迫して脳圧(脳にかかる圧力)が高まり、頭痛や吐き気が生じ、やがて傾眠(けいみん:うとうとする)状態になります。
最終的には昏睡状態となって死に至ります。
脳圧を下げるために利尿薬やステロイド薬を投与します。
がんが転移した臓器は、臓器不全を起こし。本来の機能が失われます。
それがきっかけになって別の臓器にも、次々と臓器不全が広がることを、多臓器不全といいます。
体内の老廃物を処理する臓器が生じると、昏睡に至ります。
腎臓は、老廃物を処理して体外に排出する臓器です。
腎不全を起こすと身体が向くんで衰弱していきます。
心臓が働かなくなれば、心不全によって死に至ります。