
カルシウム調整ホルモンと呼ばれる3種類のホルモンが関与しています。
骨からカルシウムを溶かし出して血液中に放出させます。
血液中カルシウムが腎臓に再吸収されるのを促進する働きもあります。
カルシウムを細胞の外から中に入れる働きもあります。
血液中の余分なカルシウムを骨の中に吸収させる働きをします。
腸などの消化器でカルシウムの吸収を助けます。
このホルモンは、副甲状腺ホルモンの働きによって腎臓で作られます。
副甲状腺ホルモンは、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐ女性ホルモン=エストロゲンの働きもある。
更年期を境に、目立って女性の骨の障害が増えている原因の一つは、女性ホルモン=エストロゲンが分泌されなくなって、骨からカルシウムが出ていきやすくなることにあります。
これらのホルモンが総合的に作用し、体内におけるカルシウムバランスが維持されます。
体内でカルシウムが不足が生じると、血液中のカルシウム濃度を一定に得ようとして副甲状腺ホルモンが働き、骨からカルシウムを溶かし出します。
骨にはカルシウム不足しているのに、体中にはカルシウムがあふれているという状態が起こります。
カルシウムパラドックスと呼ばれるものです。
体内でカルシウム不足の状態が慢性的に続くと、どんどん骨からカルシウムが溶け出し、骨粗鬆症のような症状も起きてきます。
副甲状腺ホルモンには、カルシウムを細胞の中に入れる働きもあります。
体内のカルシウム不足によって副甲状腺ホルモンが作用しつづけていると細胞の中には必要以上にカルシウム増加することになります。
結果、カルシウムバランスが崩れてしまいます。
すべての細胞は、一億対一万対一というカルシウムバランスが保たれている環境の中で、本来の活動ができ、からだは若々しく健康な状態が維持できます。
体内の情報伝達を担う神経細胞が敏速にメッセージを伝えるためにも、体内のカルシウムバランスが大きく影響します。
バランスが狂うと、神経細胞の活動が著しく低下して情報伝達がうまくいかず、さまざまな障害を引き起こす原因になります。
カルシウム不足が続いて、カルシウムバランスが生じると、もう一つ、身体に悪い現象が起こってきます。
体中にあふれたカルシウムは電気的にはプラスに傾いています。
それからマイナスに傾いている体のあちこちの組織と結合して沈着し、さまざまな障害を引き起こす原因になります。
血管の内壁は電気的マイナスに傾きやすいのですが、そこに血液中の過剰なカルシウムが集積した沈着することで、血管障害を起こすことになります。
ストレスがかかる部分には電気的にマイナスに傾きやすいためにカルシウムが沈着しやすい。
カルシウム不足は、健康維持にかなり深刻な事態を引き起こしますので、どうしても年をとるにつれてカルシウム不足がちになります。
腸からのカルシウムの吸収が落ちることや、カルシウム分を豊富に含んだ食事をたくさん食べられなくなるためです。
火山国、日本の土壌には火成岩が多く、動物の骨や貝殻などが堆積してできている石灰岩が少ししかありません。
日本の土壌にはカルシウムが少なく、そこを流れる川の水に含まれるカルシウムも少なくなります。
河川が短い分、カルシウムが溶け込みにくいという事情もあります。
カルシウムの少ない土壌で育つ日本の作物や野菜に含まれるカルシウム分も当然少なくなります。
それを食べる日本人のカルシウム摂取量が先進国に中でも最低レベルです。
昔の日本では、魚や海藻、豆類など、カルシウムが豊富な食品を摂って補いました。
食生活の欧米化で肉食が多くなり、カルシウムが豊富な海産物はあまり摂取しなくなっています。
乳製品の摂取量も少なく、日本人がますますカルシウム不足に陥っています。
問題は、カルシウム摂取量が足りないだけではありません。
多くの食品には、体内のカルシウムをどんどん奪っていくような成分も含まれています。
インスタント食品や加工食品の多くは、添加物・リン酸塩が含まれています。
ハムやソーセージの弾力を高めたり、めんの歯ざわりをよくしたり、冷凍食品の変質防止などさまざまな用途に使われています。
インスタントコーヒーや清涼飲料水、スナック菓子にも添加されています。
このリンが体内で増えるとカルシウムが減少します。
リンは、骨を作る上でカルシウムやたんぱく質と同じくらい大切な働きをします。
過剰なリンは、体内に溜まりカルシウムの吸収を妨げ、カルシウムの働きを邪魔します。
骨からカルシウムを溶かし出す副甲状腺ホルモンの分泌に作用するといわれています。
リンを摂りすぎないことが大切です。
カルシウムが体内で情報伝達の仕事を担う神経細胞の働きに大きな影響を与えます。
1億対1万対のカルシウムバランスが、神経細胞の情報伝達において、極めて重要な役割を担っている。
細胞には比率を維持するシステムが、必要以上にカルシウムが細胞内に侵入するのを防ぐと同時に情報伝達のためにカルシウムが細胞内に出入りするのを制御しています。
神経細胞は、発電機から強く、神経腺維はその電流を伝える電線の役割を担っています。
一つの細胞で起こる刺激が、次の細胞に届くと電位差が起こり、カルシウムが細胞の中に入っているようになっています。
こうして細胞の中にカルシウムが入ると、その細胞は次の細胞に働きかけるという連鎖的に反応を引き起こしていきます。
このとき、細胞内のカルシウムが血液中一万個に対して一個という割合になっていないと、その細胞は電流の刺激を敏感に感じることができません。
カルシウムを上手く受け取ることもできないので、細胞の情報伝達が円滑に進みません。
この現象は血液中のカルシウム濃度が不足しても起こります。
老化すると神経の働きが鈍くなるのはカルシウム不足のために血液中のカルシウムが細胞の中に過剰に入ってしまい細胞間の情報伝達がスムースにいかなくなるからです。